睡眠中に呼吸が止まったり、十分な呼吸ができなくなり、血液中の酸素濃度が低下すると、苦しくなり覚醒します。
起きると再び呼吸しますが睡眠すると、また呼吸が止まってしまいます。
一晩中これを繰り返すことで、脳や心臓など内臓は疲れ果てて、様々な障害を引き起こすようになります。
血圧、血糖などのコントロールが不良になり、生活習慣病を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞を発症しやすくなります。
健常な方と比べ、突然死のリスクも高いことが分かっています。
また、日中の眠気や集中力の低下から交通事故につながることもあり社会問題となっています。
いびきや無呼吸を指摘される方や日中の眠気などの症状がひどい方は、検査を受けることをお勧めします。
■原因
呼吸が止まってしまう原因は大きく分けて2つあります。
①閉塞性(OSA)
空気の通り道である上気道がくび・のど周りの脂肪沈着(肥満)、扁桃の肥大、巨舌、小顎症、仰臥位、頸部の屈曲により物理的に狭くなり呼吸が止まってしまうタイプです。
SASの大半はこのタイプです。
②中枢性(CSA)
脳、神経、心臓の病気のために脳からの呼吸するための指令が筋肉に届かなくなり呼吸が止まってしまうタイプで、SASに数%です。
①、②を合併した混合タイプもあります。
■症状
いびき、呼吸が止まる、頻回に目が覚める、寝起きが悪い、頭痛がする、だるい、日中の眠気、集中力低下、夜間のトイレの回数が多いなど様々です。
また血圧や血糖値のコントロールが悪くなることもあります。
■検査
①セルフチェックできるエプワース眠気尺度があります。(下記からダウンロードできます)
11点以上でSASの可能性が高くなります。
②簡易検査
自宅で出来る検査です。
鼻の下と手に機器を付け、普段通りに寝て、いびきや呼吸状態から無呼吸の程度を調べる検査です。
③終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)
簡易検査よりさらに詳しく、心電図、脳波、筋電位、眼電位なども検査し睡眠と呼吸状態を調べる検査です。
医療機関に一泊する必要があります。
当院では実施できませんので必要な場合は実施可能な医療機関へ紹介します。
■診断
無呼吸とは、10秒以上呼吸が停止している状態のことを、低呼吸とは、息を吸う深さが浅くなり、吸気振幅が50%以上減少する呼吸等が10秒以上続く状態のことを言います。
SASは、
「一晩(7時間)の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上おこるか、睡眠1時間あたりの無呼吸数や低呼吸数が5回以上の場合」と定義されています。
睡眠1時間あたりの「無呼吸」と「低呼吸」の合計回数をAHI(Apnea Hypopnea Index)=無呼吸低呼吸指数と呼び、この指数によって重症度を分類します。
30以上が重症です。
■治療
肥満のある方はダイエットが必要です。
また飲酒や睡眠薬はSASを助長させるリスクとなりますので節酒や中止が必要です。
①CPAP療法
現在、最も普及している治療がCPAP療法(Continuous Positive Airway Pressure:シーパップ)(経鼻的持続陽圧呼吸療法)です。
CPAPは鼻にマスクを装着し気道に機器から空気を送り続けて気道を開存させ無呼吸を予防する治療です。
鼻に装着したマスクから気道へと空気が送り込まれますので、初めは違和感や息苦しさがありますが、適切な機器の設定を行い、呼吸する時のちょっとしたコツをつかめば楽に呼吸できるようになります。
保険でCPAP療法を受けるためには定期的外来受診が必要になります。
②口腔内装置
スリープスプリントというマウスピースです。
下顎を上顎よりも前に出すように固定させることで上気道の閉塞を予防し、いびきや無呼吸の発生を防ぐ治療方法です。
歯科で作成してもらいます。
中等度までのSASには有効なことがありますが、重症例では効果が乏しいと言われています。
③外科治療
アデノイドや扁桃肥大などが原因になっている場合は、摘出手術が有効な場合があります。
治療は、SASの重症度や生活スタイルに応じて決定します。
いずれも短期的な治療ではなく長期的な付き合いが必要になります。
効果発現までの期間には個人差がありますが、効果が出始めると、眠気などの症状の改善だけでなく、血圧や血糖などのコントロールがよくなり、それらの薬剤の減量、中止が可能になる症例もあります。
■合併症
SASが存在すると、高血圧症、心臓病(心房細動などの不整脈、狭心症・心筋梗塞などの虚血性心疾患など)、糖尿病、脳卒中などの合併率が上がります。
眠気などの症状がない場合でも、薬でのコントロールが不十分な高血圧症や糖尿病がある場合にはSASを疑い検査することをお勧めします。
SASの適切な治療により合併症の程度は軽減すると言われています。